知識の得方と使い方

著者:KEN

知識の得方と使い方

日本人受講者に感じる特徴

 私は4年ほど前から、ロープアクセス技術のインストラクターをしています。指導するのが海外ライセンスを習得するための講習ということもあり、リラックスしてコミュニケーションしながら話を進める事を心掛けながら、どういう反応をするか観察して来ました。

 では、参加頂いた受講者はどう反応したでしょう?

 なんと、ほぼ無言です。渡したテキストに目を落とし、黙々と線を引く。こちらから質問しても間違えたくないのか、隣の人をチラ見しながらモジモジ。
 講習に関わった当初は真面目だなぁと思っていましたが、回を重ねるうちに私の感じ方は変わっていきました。
 ここ最近、メディアでも話題になっていますが、これは「日本の学校教育」の問題点の一つなのではないかと感じます。

 新しい事を学んで行く方法は人それぞれ異なりますが、「日本の学校教育」の特徴は、方法や手順をインプットする事に重きを置いてきたのではないでしょうか?
 私が観察してきた多くの受講者からは「やり方や手順を覚えきれない」と言う相談や「道具を取付ける順番はどうでしたっけ?」といった質問ばかりがきました。
 
 これらは私の子供たちが、家で宿題が分からない時にする質問と同じレベルのものです。 私はここで考えました。子供達から出る質問と大人のリカレント教育で出てくる質問が同じレベルでいいのだろうか・・・。
 
 子供の勉強は、将来に向けた土台作りが主な目的ですが、大人のそれは自己改革や実践に活かすことが主な目的です。この二つは大きく異なるので、本来は勉強法や思考回路を変えるべきではないかと思います。
 次に、事項では私が技術講習を行う上で工夫している点などについて話を進めて行きます。

インプットとアウトプット

 講習初日は講師と受講者が、ほとんど面識が無い状況でスタートします。
 私が行っている講習に興味がある事は前提として、自己紹介してもらいます。それと同時に、悩みや日々疑問に思っている事を一つあげてもらいます。

これは受講者の興味を刺激することを早い段階で知っておくことが狙いです。
その後は基礎的な内容を教えます。話の流れの中で出た、悩みや疑問等とマッチする内容が出るポイントでこちらから質問を行い、ディスカッションをして出た意見のとりまとめと解決のきっかけを定義します。基本的にはこの繰り返しをしながら、考え・発言・解決のきっかけをつかむことに慣れてもらっていきます。

 次は座学から実技にシフトし、技術的な手順を伝えていきます。
 ここでは大きく分けると2つのタイプに分かれます。タイプ1は「手順」を生真面目に覚えるタイプ。タイプ2は「手順」は理解しつつも、もっといい方法がないかと思考するタイプ。ここで、各タイプに同じ技術を教える場合でも話し方や話す内容、ボリュームを変えます。

 前者は、早い段階で思考回路を変えさせないと最終日試験で真っ白になってしまったり、仕事に戻ったときにまったく応用の利かない技術者になってしまいます。このタイプは日本人にはとても多いと感じます。
 
 そして後者は、理解した事をすぐに表現できるタイプ。しかし、重要ポイントを自身の都合のいいように解釈する場合が多いです。このタイプには絶対に譲ってはいけない事項を繰り返し伝えるように心がけます。

 タイトルの「インプットとアウトプット」の観点からこの2つのタイプを考えると、バランスが取れたパフォーマンスが出来るのはタイプ2の方です。

 タイプ1の方が仮に10個の事柄をインプットしたとしても、本番や必要な時に、せいぜい2~3個程度しかアウトプットできません。
 パーツをパーツとしてしかとらえておらず、どう組立てるべきかを考えていない場合が多いと感じます。

 一方、タイプ2の方はパーツ毎の特徴や意味を理解しつつ、どうパーツを組立たてたら効率的かを考えながら物事に取り組んでいると感じます。

 これはリカレント教育を実のあるものに出来るか出来ないかの決定的な要素となると考えます。

 ここ数年の受講者を観察しながら教え方の実験をして来た感触としても、インプット作業とアウトプット作業を極力、対の作業として行う事で格段に成果は高くなると実感しています。

リカレント教育について

 大人になってまで勉強するの?と考える人も多くいると思います。おそらく日本の教育環境で知識を学ぶ事を本当に有意義だと感じている人はあまり多くはないのではないでしょうか?

 私も「ただただインプットする勉強法」は好きではありません。得た知識をアウトプットすることで初めて、学びの喜びを得ることが出来ると考えます。
 
 なのでこれから、有意義な時間を作りたいと思ってリカレント教育に取り組むあなた!インプットのみに力を注ぐのではなく、インプットとアウトプットをバランス良く出来るよう心がけてみてください。

 覚えた知識は使ってなんぼです。「お金」と同様に墓場には持って行けません。皆に平等に与えられている、「1日24時間・365日」を大切に使って下さい。
 ここまで読んでくれたあなた!あなたの人生がリカレント教育により、いままで以上に豊かなものとなることを心から祈っています。

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