骨太の方針~リカレント教育は進むか?

著者:津田恵子

岸田内閣による骨太の方針とは

2022年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が決定されました。
骨太の方針の中で、第2章-1「新しい資本主義に向けた重点投資分野」には
人への投資と分配 と記載されています。これは日本がこれからの投資について、「人」を最優先する意思表示であると、私は捉えました。

デジタル化や脱炭素化という大きな変革の波の中、人口減少に伴う労働力不足にも直面する我が国において、創造性を発揮して付加価値を生み出していく原動力は「人」である。自律的な経済成長の実現には、民間投資を喚起して生産性を向上することで収益・所得を大きく増やすだけでなく、「人への投資」を拡大することにより、次なる成長の機会を生み出すことが不可欠である。「人への投資」は、新しい資本主義に向けて計画的な重点投資を行う科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXに共通する基盤への中核的な投資であるとも言える。

日本はかつてより、世界の中でも人への投資が低いことで知られています。日本企業における人材投資水準(対GDP比)はアメリカの20分の1、ドイツの12分の1です。具体的には、2010-2014年に対GDP比で0.1%にとどまり、米国(2.08%)やフランス(1.78%)など先進国に比べて低い水準にあり、かつ、近年更に低下傾向にあります。

(出所:基礎資料 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 経済産業省 経済産業政策局  令和4年2月)

そして、しっかりと予算もつきました。2年前はわずか600億程度だったことを思うと、大きく前に進んでいるように思います。

2024年度までの3年間に、一般の方から募集したアイデアを踏まえた、4,000 億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じ、働く人が自らの意思でスキルアップし、デジタルなど成長分野へ移動できるよう強力に支援する。

 

リカレント教育の普及に必要なこと

私が起業した2年半前は、まだリカレント教育の認知度が低く、リカレント教育とは何か、という話からセミナーや商談をスタートさせていました。その後、ICT分野への労働力移行、デジタル人材育成の必要性から、リスキリングの概念が台頭し、並行してリカレント教育の重要性も浸透してきたように思います。

自ら、ビジネススクールで学び直しをして思うのは、学びとは自分との内省であり、対話であるということです。自身が、会社員を卒業したこともあり、自分の価値とは何だろう?私の学ぶ目的は何だろう?苦手な科目にどう向き合えばいいのだろう?などと日々問い続けています。

骨太の方針にはこのように記載があります。

あわせて、社会全体で学び直し(リカレント教育)を促進するための環境を整備する。学び直しによる成果の可視化と適切な評価、学び直し成果を活用したキャリアアップや兼業・副業の促進、学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備、成長分野のニーズに応じたプログラムの開発支援や学び直しの産学官の対話、企業におけるリカレント教育による人材育成の強化等の取組を進める。

リカレント教育は、個人だけではなく、企業が主導で取り組んでいく時代に入りました。リスキリングによる労働力シフトに加え、やはりキャリア教育が不可欠であると思います。多くの日系大手企業の方々は、人材マーケットにおける自身の市場価値を知らないはずです。それには、個々人が大切にしている価値観を言語化し、社員の目を外に向けること、他流試合をすることなどが有効です。企業は今こそ、社員の背中をドンと押して、リカレント教育に取り組んでいくのがよいと思います。



コメントを残す

*